2015年4月20日

分子標的薬による皮膚障害

解説春藤 紫乃(しゅんどう しの)がん・感染症センター都立駒込病院 がん化学療法認定看護師

2015年2月28日(土)~3月1日(日)、パシフィコ横浜にて第29回日本がん看護学会学術集会が開催されました。初日に行われたアボットジャパン株式会社共催ランチョンセミナーでは、大腸癌治療薬である抗EGFR抗体による治療と、その副作用である皮膚障害へのケアについて解説されました。

抗EGFR抗体薬による皮膚障害
春藤紫乃先生は「皮膚障害の副作用が強くQOLが低下する一方で、皮膚障害が強く出ている患者さんほど治療効果が高いことが報告されているので、どんな皮膚障害があるかを知り、早期からのケアが大切だ」と述べ、皮膚障害について説明しました。
皮膚障害の種類と発現時期
抗EGFR抗体薬による皮膚障害は主に①ざ瘡様皮膚炎、②皮膚乾燥、③爪囲炎の3種類があります。ざ瘡様皮膚炎は投与後1~4週に発現し、頭部や顔面、腕や足に紅斑の丘疹が出るもので、特に顔面に症状が出ると外出に支障をきたす場合があります。

次いで3~5週に現れる皮膚乾燥は指先に亀裂を伴うこともあり、6~8週に現れる爪囲炎は爪の陥入した部位に亀裂を生じて疼痛を伴い、腫脹や肉芽を生じると靴を履くことや手仕事が困難になるなど、どちらもQOLが極めて低下します。

春藤先生は「最初のうちは患者さんも軽度な皮膚障害の段階では抗がん剤の副作用とは気づかずに対処が遅れることもあるので、出現時期を知っておき、皮膚をよく観察することで、症状出現の初期から予防的にケアすることができる」と解説しています。
日常生活におけるスキンケアの基本は「保湿、保清」

抗EGFR抗体薬によって皮膚障害を受けることで角質層が乱れ、外部からの攻撃に対するバリア機能が低下するため、抗EGFR抗体薬治療中の患者さんに対する日常生活でのスキンケアは、「保湿、保清」が基本であるとした上で、洗浄や保湿について、がん・感染症センター都立駒込院で実際に患者さんに指導している内容が紹介されました。

洗浄
皮膚を刺激しないように、低刺激・弱酸性の石鹸をしっかり泡立ててやさしく洗う(手のひらだけで洗ってもよい) 熱いお湯やナイロンタオルは使用せず、皮膚を強くこすらないようにする 使用した保湿剤やステロイド外用薬は1日1回洗い流す

保湿
皮膚が乾燥する前に保湿剤を塗ると効果的 実際に患者さんの前で保湿剤を塗って見せる 春藤先生:「特に男性や高齢の患者さんは保湿剤の使用量が少ないので、必要量を人さし指に出してみると、『こんなに使うんですか?』と驚かれます」

日常生活の注意点
紫外線は避ける 靴や着衣による圧迫を避ける 手足症候群では手掌、足底への圧迫へも注意する 歩き過ぎも避ける
ざ瘡様皮膚炎に対する実際のケア
ざ瘡様皮膚炎は、症状に気づいたら必ずステロイド外用薬を塗布することが重要です。
ステロイド外用薬
保湿剤や化粧水をつけてから塗る その上に日焼け止めやお化粧をする ステロイド外用薬の強さを知っておく
春藤先生:「ざ瘡様皮膚炎が強くなっても弱めのものを使っていると悪化する場合があるので、医師と相談して処方を変えてもらう必要がありますね」
患者さんの皮膚の観察
爪囲炎では、「とにかく触れないように」と絆創膏でぐるぐる巻きにしたままにしておく患者さんが非常に多いのですが、生活上テープで保護することで歩行しやすくなる患者さんもいます。
テープで保護している場合にも、就寝前にはテープを剥がし、洗浄することが重要です。また、爪の横の皮膚が爪に覆ってしまう場合には、爪の横から螺旋状にテープを巻き、くい込みを軽減させると同時にステロイド薬を塗りこんでいく方法が効果的であると紹介されました。
さらに、足だけに症状が出る人は、気づくのが遅くなることもあるため、春藤先生は「忙しい外来でも、患者さんに靴下を脱いでもらい観察する必要があります」と強調しました。

最後に春藤先生は、「患者さんの生活、皮膚症状についてどのようにとらえているかを把握した上で、患者さんが実践可能な皮膚障害のケアを提案してほしい」と結びました。

[ナースプレス http://nurse-senka.jp/contents/press/218187/]